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第54回:発展途上国問題

 発展途上国をもっと発展させたい。

 何かしらの援助を行いたい。

 AO入試の際に、こういったことを述べてやってくる生徒もいると思います。途上国と呼ばれる地域を訪れた際に目にした貧しい現状、自分たちとかけはなれた生活をしている様子、それらを原体験として「格差を直したい」「ODAに関わりたい」と感じたのだと思います。

 そういった考え方の根本に恐らくあるのは「発展途上国」はいつか「発展」するという概念。国家単位あるいは民族単位で、前近代的な社会がだんだんと発展していき、いつかは先進国のようになる、発展途上国はまだまだ遅れている、こう考えられるのが一般的ではないでしょうか?

 恐らく、大学入学までの教育課程では、主に現代社会の中で「先進国」「発展途上国」「最貧国」という枠組みでしか世界的な仕組みを教えられず、上に述べたような概念、「国家単位でも『努力すればいつかは進歩できる』」という考え方を、先進国である日本の教育が自然に国民へ浸透させているのだと思われます。その中で育った日本の高校生が、なんとなく、「発展途上国を援助したい」といった意志をもつのももっともだと感じます。

 しかしながら、とりあえず知ってほしいと思うのは「世界経済システム」という考え方。経済学や社会学を専門としてはいないので、少し間違いがあるかもしれませんが、簡単にいえば、「発展途上国は『遅れている国家』あるいは『世界の中で遅れている部分』ではなく、世界全体として見れば近代化が『進んだ結果』なのである」ということ。ある『モノ』ができあがるには、原料となる一次産品が生産され、それらが製品へ加工され、人々の手へ販売されていく必要があります。国家単位、民族単位でその全てをやるよりは、例えば資源豊富なマレーシアにゴムだけをひたすらつくらせ、中国にひたすら加工させて、日本で管理し世界へ販売していく、こういった分業体制を整えた方が世界全体として『近代化』しているわけで、一次産品だけをつくっているマレーシアのみを見ると『発展途上』と感じるかもしれませんが、世界的にはマレーシアも『近代化が進んだ結果』といえるのです。

 昔、欧米列強が植民地支配を行い、一次産品を吸い上げ、本国に利益をもたらしていました。その後、『植民地支配からの独立』が進みましたが、経済的には一次産品を欧米列強が吸収し、利益を得る構図が変わっていないとも言えるのです。

 これは何も『先進国』と『発展途上国』、という部分だけに見られるものではなく、日本においても『エリート社員』と『アルバイト、派遣労働者』という、たとえ労働時間が同じでも、その報酬にかなりの金額差がみられるように、少数の人の利益を周辺の複数の人が支えている面があります。

 また、民族の「伝統」と呼ばれるものも、近代化が進んでから正当化のために味付けされたもの、つまり、「~人は伝統的に何々をつくって生きている」だとか「黒人は炎天下での労働に適している」といったことも、先進国が、発展途上国を一次産品の供給所とするために無理にとってこじつけられたものであるとも言われています。考えてみればあたりまえで、もともと、綿花やゴムだけをつくって生きていけるような民族など存在しないのです。

 話が長くなりましたが、つまりは「このままいっても駄目なのではないか?」ということ。安易に「ODA」や「国際的援助」を叫んでいても、何も解決できない可能性があります。SFCへ入学していく学生には、是非とも、この壁を乗り越えてもらいたいと思い、今回の記事を書きました。

慶応義塾大学SFC 総合政策学部 尾室 拓史

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