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第4回:合格一直線
今回は私の受験体験を書く。受験しようと思ったきっかけはまたいつか・・・。
とにかく8月インターハイ後に具体的に考え始め、8月末に東海大学を辞退して受験を決めた。9月初めの全日本ジュニア大会が終わってから準備に取り掛かったものの、10月初めの新潟国体まではそれまで通り柔道漬けの生活を続け、その後やっと全力で受験に取り組んだ。かなり遅いスタートだった。
慶應大学AO入試は、高校3年間、柔道しかしてこなかった私に今までの人生を見直す、あるいはこれからの人生を考える良い機会となった。
一次試験の小論文。社会における問題とその解決策を提案し、それをどう実現するか、自分が社会に何をしたいのか、を2000文字で論ずる。
苦労した。「 将来何になりたいの ? 社会に出て何をやりたいの ?」。答えられなかった。ウルトラマンかな、総理大臣かな。いやいや、そうじゃない。柔道引退後の具体的な人生を全く考えていなかったのだ。テーマが決まらない。論文は、柔道バカと思われないよう敢えて柔道以外のテーマを、という先輩からの助言もあったが、どうあがいても柔道以外のことは考えられない。柔道以外のことを何も知らない自分を思い知った。悩んで焦って、辿り着いたのは結局柔道。知らないことを無理に書くより自分にとって一番身近な柔道を突き詰めよう、と開き直り、柔道プロ化プロジェクトをぶち上げた( 正直、それまでプロ化を突き詰めて考えたことはなかった )。
超得意分野の柔道にテーマを決めると後は簡単。何故プロ化が必要と考えるのか。実現は可能か、それには何が必要か。そのために自分に何ができるか。それを突き詰めることは、自分にとって柔道が何なのか、現役引退後の人生に何があるのかをとことん考えることとなった。普段漠然と感じていた疑問や不安やアイデアが、どんどん言葉になって出てきた。それらを整理して煮詰め、洋々や周りの人の助けを得ながら一気に書き上げた。
自由ページには欧州遠征記を書いた。8月にオランダ・ドイツへ行った際の旅行記と柔道の国際化についての考察だ。結局これも柔道。
添付資料には、高校3年間の柔道活動実績に関する、新聞雑誌に載った記事や賞状などをまとめたものが14項目およそ100枚。柔道以外の活動はわずかに1項目、3年生で学級委員をしたことだけだった。1項目だけでもあって良かった。
評価書は、敢えて柔道関係の先生ではなく学科の先生にお願いした。せめてこれだけは柔道以外の面をアピールしたかったのだ。国語の女性の先生が、私が村上春樹を愛読することや好きな音楽のこと、一度全国選手権を観戦に来てくれた時に私を見て感じたことなどを書いてくれた。
そんなこんなで必死で作った一次試験書類を郵送し、二次面接で論文の内容に関するどんな質問にも答えられるようスポーツ関係の本や記事や論文を読みまくりながら、胃の痛くなるような1ヵ月半をすごした。そして無事一次通過。「一人くらい柔道バカがいてもいいか」と慶應は考えたのかも知れない。
二次試験、面接。聞いてはいたが、いじめられた( 面接官をぶん投げてやろうかと何度も考えた。三対一だったが腕力なら負けない)。小論文に関して徹底的に質問されると予備校や先輩から聞いていたので、あらゆる質問を想定して備えていたが、論文に関する質問は一つもなかった。30分あまり、柔道でこのレベルの選手が何故慶応大学なのか、という質問に終始した。誰に聞いても30分は長い。結局面接官を納得させたと思えるような答えは一度もできなかった。一人の面接官に、「あなたの資料の中で一番良かったのは、国語の先生の評価書です。100枚の新聞記事なんかよりも価値があります」 と言われた。「100枚の新聞記事に載るのって楽じゃないんだよ」心で言い返した(笑)。そんなこんなで正直、こりゃ落ちたな、と思った。でも出来る事は全てやった。「我が受験人生に一片の悔いなし」。
しかし面接官は、面接での強気な私のお手並み拝見と考えたのか、合格した( 投げずに、我慢して良かった)。番号があると聞いた時は少しだけ泣けた。
全国制覇じゃない、こういう涙も悪くない。
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